妄想お茶にごす。全20巻(クライマックスシーン!)

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2010/04/28
このページでは、だいちさんから2010/02/06に当サイトのブログにお寄せいただきました「妄想20巻のクライマックスシーン」を紹介いたします。

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<注意書き>

バトルのクライマックスにあたり、まークンの異母兄弟の名前を
「亜紅 真」から「亜久間 将」に設定変更しました。
また、まークンと部長のお互いの呼び方ですが、部長は少しだけ慣れて
「船橋クン」から「雅矢クン」にランクアップしていますが、
まークンは相変わらず「部長」と呼んでいるという状況です。


<背景>

まークンは、軽高の理事長室にいる父親と話をつけようとするが、
彼を阻止しようと様々な邪魔者が現れる。
しかし、ヤーマダ、ブルー、古田がそれらの相手を引き受けてくれたため、
彼は先を急ぐことができた。
道の途中で部長と出会う。彼女も事情を知っていたのだ。
危険だからと止めたにも拘らず、彼女は付いていくと譲らなかった。
そして、2人は軽高の校庭に辿り着いた。
しかし、そこで彼らを待っていたのは最強・最悪の男・亜久間に率いられた
100人ものワルの集団だった。
そう、亜久間の罠とは雅矢を部長の前で暴れさせることで2人の間を裂き、
雅矢を叩きのめすと同時に部長を我が物にするというものだった。


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校庭の中央に立ち尽くす亜久間 将…転校後、わずか三日で軽高の
全てのワルをシメて支配した、腕力と狡猾さを併せ持つ、
魔将クンと恐れられる悪のカリスマだった。
その顔かたちは異母兄弟である雅矢と瓜二つ…唯一異なるのが
7・3に整然と分けた髪型だが、その小市民的な髪型が
いっそう彼の悪魔的なオーラを高めていた。
…そう、彼は見かけ通り、人の命など何とも思わない男だった。
もし誰かが軽高の門からその悪魔的な姿を見たならば、
思わず背筋に悪寒を感じて身を竦めていただろう。
さらには雅矢たちを幾重にも取り囲む軽高のワルたち。
おそらく百人は下るまい。

「クックックッ…罠と知ってもここにきたんだね。」

丁寧な言葉遣いが、彼の悪のオーラをいっそう引き立てていた。

「いや、オレはケンカに来たんじゃない。親父と話がしたいだけだ。」

決して暴力は振るわないことを部長と約束した雅矢が答える。
その言葉を聞いて、さらに含み笑いをする亜久間。
それはまさに悪魔の嘲笑だった。

「ケンカに来たんじゃないって??面白いジョークだね。
 キミはボクと同じ父の息子…暴力と強欲の化身のはずだけどな。
 今ここで、化けの皮を剥いであげるよ。
 そこのキミたち、船橋に何か用があるんじゃないのかい??」

亜久間の命令でワルが数人、雅矢に殴りかかる。
しかし雅矢は避けるばかりで、一向に反撃しようとはしない。
決して闘おうとしない雅矢の姿勢に徐々に苛立つ亜久間。
これでは雅矢から姉崎奈緒美を奪い取る計画が台無しだからだ。

「…バカだね、優しさなんかで何ができる?! 何が守れる!?
 闘わないなら、キミが慕う姉崎さんをボクが頂いちゃうよ。」

亜久間が顎をしゃくると、ワルの一人が呆然としている部長に近付き、
その肩に手を伸ばした。

その時だった。

ゴッ!!

鈍い音がしたかと思うと、次の瞬間、そのワルが吹っ飛んでいだ。
硬く拳を握り締める雅矢。驚きの表情で口元を押さえる部長。

「…部長を傷つけようとするヤツは…殺す!!」

雅矢の全身から凄まじい殺気がほとばしった。
慌てて彼の暴走を止めようとする部長を雅矢は腕で制止した。

「すみません、部長…オレ、約束を守れないっス。」

雅矢は、彼女を振りかえることなくそう言い切った。
もはやこの場で拳を振るうことに全く迷いはなかった。

ここで約束を破って暴れたら、部長はオレを軽蔑して嫌うだろう。
だけど…部長に嫌われても…もう会えなくなっても…仕方ない。
…オレはどんなに嫌われようと…大好きな女(ひと)だけは、
何があっても絶対に…絶対に守る!!

「オレが一番守りたいのは…誰よりも…何よりも…守りたいのは…
部長の笑顔っス。」

「…ま…雅矢クン…」

周囲を見渡す雅矢の凄まじい形相に、取り囲むワルは思わず怯んだ。
その姿は悪魔…いや闘神・阿修羅のようだった。

「部長を泣かすヤツは殺す! 部長の笑顔を奪うヤツはブッ殺す!!
 オマエら、束になってかかってこい!!」

「や…やっちまえーっ!!」

雅矢への恐怖が引き金となり、ワル達は一斉に雅矢に襲い掛かった。
それを迎え撃ち、片端から次々と敵をなぎ倒していく雅矢。
…それは、まさに阿修羅のごとき姿だった。
血で血を洗う修羅場とはこのような場面に違いあるまい。

「…見なよ、姉崎さん。」

雅矢の姿に息を呑んで立ち尽くす部長に、亜久間が丁寧な口調で語りかける。

「優しい男を装っていても、一皮剥けば野獣と変わらない。
 それが船橋雅矢…ヤツの正体さ!!これでヤツのことが判っただろう??」

部長が凛とした表情で言葉を返す。

「雅矢クンが野獣のはずはありません。
雅矢クンは…雅矢クンは心の綺麗な…とっても優しい人です。」

予想外の姉崎の言葉に虚を突かれて、少し動揺する亜久間。

「何だって??暴力の限りを尽くすあの姿のどこが優しい!?」

「あなたには判らないのですね。
 拳を振るっていても、雅矢クンが…心で血の涙を流しているのが。
 同じ顔をしているのに、あなたと雅矢クンは正反対ですね。」

「…何をバカなことを…」

なおも部長は悲しげに言葉を続けた。

「…雅矢クンは暴力とは無縁のロハスな日々を過ごしたがっていたの。
 それなのに私を囮にして、無理やりあんな大勢相手にムチャを
 させるなんて…酷すぎます。」

亜久間は含み笑いをすると、済ました声で丁寧に答えた。

「ボクは頂点に立つ男です。だから下に命令して何が悪いのかな??
 それに獣を狩るには大勢で追いたてるのが定石ですからね。」

その言葉に部長は激しく首を振った。

「雅矢クンは獣ではありません!!彼は…誰よりも優しい人です!!
それに、あなたは頂点に立つ人でもありません。
自らの手を汚さないあなたを…私は卑怯者だと思います!!」

「ひ…卑怯者だって??」

予想もしなかった彼女からの厳しい非難の言葉。
プライドを傷つけられた亜久間はワナワナと身震いを始めた。
自分への侮辱は誰であろうと許せない。

「雅矢クンを…優しい雅矢クンを私に返してください!!
 私は…私は、優しい彼を心から愛しているんです!!」

本当は怖いに違いない。
彼女の足はガクガクと震えが止まらないのだから。
…それでも、決して眼を逸らさずに自分にハッキリと物言う彼女に、
亜久間の心の中で何かがキレた。

大人しそうに見えるが…この女の支配は無理だ。
いや…自分の足元を揺るがす危険な相手かもしれない。
その可能性がある以上、誰であろうとすぐに始末しなくては。

「その美貌に免じてボクの女にしてやろうと思っていけど…もういいや!!
 ウハハハハハッ!!
 こうなったら、二目と見られない顔にしてやる!!」

本性を曝け出して高笑いをすると亜久間。
そして容赦なく彼女にその拳を振り下ろそうと構えた。

ドスッ!!

間一髪、雅矢の腕が亜久間のパンチの盾となり、部長を守っていた。
もの凄い表情で亜久間を睨み付ける。

「…頂点に立つ男なら、正々堂々とタイマンしたらどうなんだ!?」

「言ったね、ボクのコピーの分際で!! 
 こうなったら、このボクが直々にキミの相手をしてあげるよ!!
 本当の強さというものを、最高の恐怖と共に思い知らせてやる!!」



凄まじい闘いが始まった。
力対力…技対技…スピード対スピード…そして激突する拳と拳。
常人を遥かに凌駕した2人の戦闘力はまさに互角!!
竜虎の激突というに相応しい。
あまりの迫力に飲まれて、ワルたちすら一歩も動けなかった。



闘いは激しく…そして長く続いた。
2人ともお互いに一歩も引かなかったからだ。


…こいつ…強ぇ…

雅矢は、未だかつてタイマンで負けたことはなかった。
…しかし、これほどの強敵には出会ったことはなかったのだ。

…このクソコピーが!!…

そして、相手の強さに驚いたのは亜久間も同じだった。
本気の彼を相手にして一分と立っていられた男など、
今まで誰一人としていなかったのに。
コイツは何発入れても倒れない! 何発決めても反撃してくる!!

「うおおおおおぉぉぉー!!」


2人は声を限りに吼えた。
決着をつけるべく渾身の力を込めた鉄拳がそれぞれの頬に同時にめり込む。

…ズンッ…

鈍い音が響き、そしてドウと地面に倒れこむ2人。
それはダブルノックアウトだった。


…しばらくは2人ともピクリともしなかった。

しかし、やがて亜久間の体が微かに動き、そして立ち上がろうと
もがき始めた。

一方の雅矢はまだ動けない。
彼の意識は確かにまだ完全に飛んでいたのだ。
倒れた雅矢に、必死の思いで部長が声をかける。

「…雅矢クン…負けないで…。…負けないで…雅矢クン…。」



…霞がかかった雅矢の脳裏に敗北の予感が過ぎっていた。

…オレは…オレは負けるのか?? …

全力は尽くした。しかし、それでもヤツには勝てなかった。
諦めかけたその時だった。

朦朧とする意識の中に…誰かの声が聞こえてくる。
胸が締め付けられるような…この声の持ち主は…。


…雅矢クン…負けないで…。


…負けないで…雅矢クン…。


…雅矢クン…


…雅矢クン…


次の瞬間、雅矢の目がカッと開いた。


そうだ、オレは負けねぇ!!負けられねぇんだ!!
…部長!…オレは…部長の笑顔が…大好きだ!!
絶対に…絶対に部長の笑顔だけは守りきるんだ!!…


雅矢は亜久間より僅かに早く立ち上がった。そして拳を握り締める。

「うおおおおおぉぉぉー!!」

次の瞬間、雅矢は渾身の力を込めた鉄拳を最強の敵の頬へと再び叩き込んだ。

…バキッッ!!…

木の葉のように吹き飛んだ亜久間の体は、木造の倉庫の壁をも突き破って
その中へと消えていった。

そして…今度こそ、亜久間が立ち上がることはなかった。







ワルたちのカリスマ…亜久間将が敗れてからは事の展開が早かった。
雅矢に恐怖したワルたちは、我先と軽高から逃げ出したからだ。
5分もしないうちに、校庭に取り残されたのは雅矢と部長の2人だけに
なっていた。

顔を上げた雅矢は、部長の頬に伝わる涙に気付き、思わず背を向けた。

約束を破って…部長を泣かせてしまった。
オレにはもう合わす顔がない。

楽しかった部長との思い出が走馬灯のように浮かんでは消えた。
開高の茶道部に誘ってくれた出会い…夏の合宿…体育祭…文化祭…
卒業式…そして、大学に入った彼女に告白するために走った夏の日…
どんな時でも彼女はオレに微笑みかけてくれた。
…もうこれで彼女とは終わりかと思うと何よりも悲しかった。

それでも雅矢は何とか声を絞り出した。

「部長…やっぱオレは優しい人になれなかったっス。
 部長の笑顔を守れなかったオレには、付き合う資格がないです。」

しかし・・・

「笑顔を…守れなかった??…雅矢クン、私をよく見て…。」

彼女の言葉にゆっくりと振り向く雅矢。 
彼の瞳に映った彼女は、涙を流しながらも幸せそうに微笑んでいた。

「!!」

驚く雅矢に、部長は言葉を続けた。

「…拳を振るってしまったけど…
 今日の雅矢クンは…誰よりも優しかったよ。」

そして彼女は雅矢の目前に歩み寄ってきた。

「部長??」

「違うよ、それ。…ね、顔が遠いから…少し屈んで。」

無意識のうちに彼女の言う通りにする。
彼女はすっと背伸びをすると、自分の唇を雅矢のそれに重ねた。

「!!」

一瞬唇が触れただけのファーストキス。
それでも、2人はこの一瞬の記憶を一生の宝物にするに違いない。
頬を赤く染めながらも、彼女は雅矢に自分の心をはっきりと伝えた。

「私は…一生あなたの傍にいます。
 だから…だから、私を奈緒美って呼んでね…雅矢…。」

「…奈緒…美…」

次の瞬間、雅矢は奈緒美を両腕でしっかりと抱きしめていた。
…シャンプーのいい香りがする。

雅矢はようやく悟った…彼女はもう『部長』じゃないんだと。
彼女は奈緒美…このオレの…唯一無二の女(ひと)だ…

…混沌とした世界で邂逅し…互いに惹かれあった女神と悪魔は…
厳しい試練を経て人と人へと変身していた…。



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某アニメ最終回を意識して作ってみました。
これが判る人は…ある意味、スゴイですね。      By だいち


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ここまで細かく設定してあるのはさすがと感心!〜優しさとは?そして、悪魔と女神が人になる〜といったテーマになっていて感動的です!!
このようにシーンをピックアップして創作するっていうのも面白いものですね。
だいちさん、短期間に大作をありがとうございました!(管理人)



「お茶にごす。」 特設ページ だいちさんの「お茶にごす。」についてのレビューのページです。

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